運送業特定技能

運送業界の人手不足、本当に深刻ですよね。

でも、特定技能「運送業」制度を正しく理解し、活用することが、その解決に向けた確かな一歩になります。

この記事では、2024年に新しく始まった特定技能「運送業」の制度について、その基本から受け入れ企業が満たすべき条件、具体的な準備の手順、さらには必要な費用や注意点まで、7つのステップに沿って詳しくご説明します。(※1)

目次

1. 特定技能「運送業」とは。制度の基本と導入の背景

運送業界の深刻な人手不足を背景に、外国人材を即戦力として受け入れるための特定技能「運送業」制度が新たに導入されました

この制度を正しく理解することが、外国人ドライバー活用の第一歩です。

具体的には、運送業界における人手不足の現状と課題特定技能制度導入の経緯と運送業への適用特定技能「運送業」の対象となる具体的な業務範囲トラック、バス、タクシー各分野での仕事内容、さらには特定技能1号と2号の違いや技能実習制度との比較について詳しく見ていきましょう。

この制度の基本を押さえることで、企業は新たな人材確保の道筋を描けます。

1.1 運送業界における人手不足の現状と課題

日本の運送業界は、トラック、バス、タクシーのいずれの分野においても、ドライバーの高齢化や若年層の入職者減少により、慢性的な人手不足が喫緊の課題です。

令和4年度の有効求人倍率は2.61倍と非常に高く、このまま対策を講じなければ、5年後には約28万8千人ものドライバーが不足すると予測されています。

内訳はトラック分野で約20万人、タクシー分野で約6万7千人、バス分野で約2万2千人の不足が見込まれます。

このような状況は、長時間労働の常態化や、物流・旅客輸送といった社会インフラの維持を困難にする大きな要因となっています。

この深刻な人手不足を解消することが、特定技能制度導入の大きな目的の一つです。

1.2 特定技能制度導入の経緯と、運送業への適用

特定技能制度は、国内での人材確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れることを目的として2019年4月に創設された在留資格です。

深刻化する人手不足に対応するため、2024年3月には、「自動車運送業」を含む4分野が新たに対象として追加されました。

政府は自動車運送業分野において、今後5年間(令和6年度から令和10年度末まで)で最大2万4,500人の特定技能外国人材の受け入れを見込んでいます。

この決定は、日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持するために、運送業界の人手不足解消が急務であるとの認識に基づいています。

1.3 特定技能「運送業」の対象となる具体的な業務範囲

特定技能「自動車運送業」の在留資格を持つ外国人が従事できるのは、トラック運送業、タクシー運送業、バス運送業の3つの業種における事業用自動車の運転業務、およびそれに付随する業務です。

具体的には、貨物自動車や旅客自動車の運転に加え、運行前後の車両点検、乗務記録の作成、荷物の積付けや荷役作業(トラック)、乗客への適切な対応や接遇業務(タクシー・バス)などが含まれます。

日本人が通常行っている車両清掃や運行前後の準備・片付けといった関連業務に付随的に従事することも可能ですが、主たる業務はあくまで運転業務とその関連業務です。

これらの業務を通じて、特定技能外国人は日本の物流と旅客輸送を支える重要な役割を担います。

1.4 トラック、バス、タクシー各分野での仕事内容

特定技能「運送業」として働く外国人材は、トラック、バス、タクシーのいずれかの分野で専門的な運転業務に従事しますが、それぞれの分野で求められるスキルや知識、そして日々の業務内容は異なります

トラックドライバーは、主に貨物の安全かつ効率的な輸送を担当し、荷物の積み下ろしやルート配送、長距離輸送など多様な運行形態があります。

バスドライバーは、路線バスや貸切バス、送迎バスなどでお客様を安全・快適に目的地まで輸送する役割を担い、正確なダイヤ運行や乗客への丁寧な案内が求められます。

タクシードライバーは、お客様を個別に目的地までお送りする仕事で、地理に関する知識や臨機応変な対応力、高いコミュニケーション能力が必要とされます。

いずれの分野も、安全運転はもちろんのこと、車両の日常点検や運行記録の作成といった付随業務も重要な仕事内容です。

1.5 特定技能1号と2号の違い、運送業における位置づけ

特定技能には、「特定技能1号」と「特定技能2号」という2つの在留資格区分が存在し、それぞれ対象となる技能水準や在留期間、家族帯同の可否などが異なります。

特定技能1号は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」であり、在留期間は通算で上限5年、家族の帯同は基本的に認められません。

一方、特定技能2号は「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」で、在留期間の上限はなく、要件を満たせば配偶者や子の帯同も可能です。

現時点(2024年6月時点)で、自動車運送業分野においては特定技能1号のみが対象であり、特定技能2号での受け入れはできません。

したがって、運送業で特定技能外国人を受け入れる際は、まず特定技能1号の要件を満たす人材が対象となります。

1.6 技能実習制度との比較。特定技能の特徴

技能実習制度は、日本の技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転し、その国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした国際貢献のための制度です。

これに対し、特定技能制度は、国内での人材確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を即戦力として受け入れることを目的としています。

特定技能制度の大きな特徴は、深刻な人手不足に対応するための労働力確保という側面が強い点です。

技能実習制度が原則として転職を認めていないのに対し、特定技能制度では同一業務区分内での転職や、試験に合格すれば他分野への転職も一定の条件下で可能です。

また、受け入れ機関(企業)には、外国人材への直接的な支援(生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談対応など)が義務付けられています。

運送業界においては、即戦力としての活躍が期待される特定技能制度の活用が、人手不足解消の有効な手段の一つとして注目されています。

2. 外国人材受け入れのための詳細。企業と外国人双方の条件、必要な手続き

  • 受け入れ企業に求められる運送事業許可と業界団体への参加
  • 働きやすい職場環境の証明。認証制度やGマークの取得
  • 外国人材の技能要件。職種別評価試験の内容
  • 外国人材の日本語能力要件。職種別の水準
  • 日本の運転免許取得プロセスと、海外在住者向け準備期間
  • 採用から就労開始までの手続き。全体の流れ
  • 外国人材への支援計画。作成と実施の義務、登録支援機関の活用
  • 在留資格「特定技能1号」の申請。手続きと必要書類

3. 特定技能「運送業」導入のメリットと注意点。費用、教育、安全管理まで

  • 特定技能「運送業」導入による企業の主な利点
  • 特定技能「運送業」導入時の注意点と企業側の課題
  • 言語や文化の違いを乗り越えるための対策
  • 外国人ドライバーの日本での運転適応支援と教育
  • 受け入れにかかる費用の内訳と企業負担の範囲
  • 受け入れ後の初期研修。初任運転者研修などの確実な実施
  • 継続的な日本語教育と安全運転指導の重要性
  • 外国人材が定着しやすい職場環境づくり

4. 特定技能「運送業」制度活用のための最終準備と情報収集

特定技能「運送業」制度を円滑に活用するためには、正確かつ最新の情報を継続的に収集し、適切な準備を行うことが何よりも重要です。

制度に関する公式情報は、国土交通省や関連省庁のウェブサイトで確認できるほか、自動車運送業分野特定技能協議会からも運用に関する重要な情報が提供されます。

また、関連セミナーや説明会への参加、必要に応じた行政書士など専門家への相談も有効な手段です。

これらの情報収集と準備を通じて、持続可能な運送事業の実現に向けた特定技能制度の戦略的な活用と、受け入れのための盤石な社内体制の整備を進めましょう。

この最終準備段階をしっかりと行うことで、制度導入後のスムーズな運用と、外国人材の活躍促進、ひいては事業の安定化と成長に繋がります。

4.1 最新情報の入手先。国土交通省や関連省庁の公式情報

特定技能「運送業」に関する最も信頼性が高く、基本的な情報は、国土交通省や出入国在留管理庁といった関連省庁の公式ウェブサイトから入手できます。

これらのウェブサイトでは、制度の概要、対象となる業務範囲、外国人材や受け入れ企業の要件、申請手続き、関連法規の改正情報、通達などが随時公開されています。

例えば、国土交通省のウェブサイトでは「特定技能「自動車運送業」の概要」や「特定技能外国人受入れ(自動車運送業分野)の基準概要」といった資料が掲載されており、制度の根幹を理解する上で不可欠です。

2024年3月に自動車運送業が特定技能の対象分野に追加された経緯や、それに伴う詳細な運用ルールもここで確認できます。

これらの公的機関が発信する一次情報を定期的に確認することが、正確な知識を得るための第一歩となります。

制度を正しく理解し、適切な手続きを進めるためには、これらの公式サイトをブックマークし、常に最新の情報を参照する習慣をつけることが推奨されます。

4.2 自動車運送業分野特定技能協議会の役割と提供情報

特定技能外国人を受け入れる企業は、「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入が義務付けられています。

この協議会は、国土交通省が設置し、制度の適正な運用と外国人材の保護を目的としています。

協議会は、制度に関する最新情報の共有、受け入れ企業や外国人材からの相談対応、関係機関との連携、不正行為の防止など、多岐にわたる役割を担います。

具体的には、特定技能外国人の受け入れ状況の把握や、地域ごとの人手不足の状況に応じた情報提供も行い、制度が円滑かつ効果的に運用されるよう努めています。

受け入れ企業は、この協議会に対して必要な報告を行う義務があり、協議会からの指示や指導に従う必要があります。

協議会が提供する情報を活用し、その指導に従うことで、法令を遵守した適切な外国人材の受け入れと管理が可能になります。

自動車運送業分野特定技能協議会への加入と積極的な関与は、特定技能制度を適正に運用し、外国人材の受け入れを成功させるための重要な鍵となります。

4.3 関連セミナーや説明会への積極的な参加による知識更新

特定技能「運送業」に関する制度は比較的新しく、今後も運用状況に応じて細かな変更や追加情報が出てくる可能性があります。

そのため、国土交通省、出入国在留管理庁、業界団体、あるいは行政書士会などが主催するセミナーや説明会に積極的に参加することは、最新情報を効率的に収集し、理解を深める上で非常に有効です。

これらのイベントでは、制度改正のポイントや具体的な申請手続き、受け入れ企業の成功事例や注意点、外国人材とのコミュニケーション方法など、実務に直結する情報が提供されることが多いです。

例えば、最近ではオンライン形式でのセミナーも増えており、地理的な制約を受けずに参加できる機会も増えています。

参加費用がかかる場合もありますが、専門家から直接話を聞ける機会や、質疑応答を通じて疑問点を解消できるメリットは大きいです。

常にアンテナを張り、関連するセミナーや説明会の開催情報をチェックし、積極的に参加することで、知識を最新の状態に保ち、制度活用の質を高めることができます。

4.4 行政書士など専門家への相談検討とそのポイント

特定技能「運送業」の受け入れ手続きは、申請書類の作成や支援計画の策定など、専門的な知識を要する部分が多く、複雑です。

自社だけで全ての手続きを進めることに不安がある場合や、より確実に制度を活用したい場合には、出入国管理業務を専門とする行政書士などの専門家への相談を検討することも有効な選択肢となります。

専門家は、最新の法令や審査基準に基づいた的確なアドバイスを提供してくれるだけでなく、煩雑な書類作成や申請代行を依頼することも可能です。

特に、初めて特定技能外国人を受け入れる企業や、社内に専門知識を持つ担当者がいない場合には、専門家のサポートが大きな助けとなるでしょう。

相談する際には、自動車運送業分野の特定技能に関する実績が豊富かどうか、料金体系が明確であるか、コミュニケーションが円滑に取れるかといった点を確認することが重要です。

複数の専門家に話を聞いて比較検討することも一つの方法です。

専門家の力を借りることで、手続きの負担を軽減し、法令遵守を確保しながら、スムーズな外国人材の受け入れを実現できます。

適切な専門家を見つけ、効果的に活用することで、特定技能制度導入のハードルを下げ、より安心して外国人材の受け入れを進めることができるでしょう。

4.5 持続可能な運送事業実現に向けた特定技能制度の活用と社内体制整備

特定技能「運送業」制度は、単に人手不足を補うための一時的な手段ではなく、企業の持続的な成長と運送事業の安定化に貢献する戦略的な取り組みとして捉えるべきです。

そのためには、制度の活用と並行して、外国人材が能力を最大限に発揮し、長期的に定着できるような社内体制の整備が不可欠となります。

具体的には、受け入れ前の準備段階から、言語・文化の壁を乗り越えるためのコミュニケーション支援、日本人従業員の異文化理解促進、キャリアパスの提示、適切な評価制度の導入、そして安全管理体制の徹底など、多岐にわたる配慮が必要です。

例えば、特定技能1号の在留期間は最長で5年間ですが、その間に外国人材がスキルアップし、将来的にはより上位の資格取得や責任あるポジションを目指せるような環境を整えることで、モチベーションの維持・向上にも繋がります。

特定技能制度を戦略的に活用し、外国人材が働きがいを感じられる職場環境を構築することが、将来にわたる運送事業の発展と、地域社会への貢献に繋がります。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 日本の運転免許を持っていない外国人の方を、特定技能のドライバーとして採用することは可能ですか?

A1. はい、可能です。

特定技能「自動車運送業」では、日本の運転免許をお持ちでない外国人の方も、まず「特定活動」という在留資格で日本に入国し、運転免許の取得や必要な研修を受けるための準備期間が設けられています。

この期間中に、トラック運転者であれば最長6ヶ月、バス・タクシー運転者であれば最長1年間、日本に滞在して免許取得などに専念できます。

免許取得後、特定技能1号へ移行する手続きを行いますので、企業様は受け入れ準備を進めることが大切です。

Q2. 特定技能で運送業の外国人材を受け入れる企業として、どのような準備や条件が必要になりますか?

A2. 特定技能の外国人材を運送業で受け入れる企業様には、いくつかの重要な条件があります。

まず、道路運送法に基づく自動車運送事業者であることが基本です。

それに加え、外国人材が安心して働ける環境整備への取り組みを示す「働きやすい職場認証制度」の認証を受けていること、またはトラック事業者様の場合は「安全性優良事業所(Gマーク)」の認定を受けていることが求められます。

さらに、国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入も、在留資格申請前までに必要です。

これらの準備を整えることが、特定技能の受け入れ企業としての第一歩です。

Q3. 特定技能の外国人ドライバーを受け入れるにあたり、企業はどのような支援を行う義務がありますか?

A3. 企業様には、特定技能の外国人ドライバーが日本で安心して仕事と生活ができるよう、多岐にわたる支援を行う義務が生じます。

具体的には、来日前の情報提供、出入国時の送迎、住居の確保支援、銀行口座開設や携帯電話契約などの生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供、相談や苦情への対応などが挙げられます。

これらの支援は、登録支援機関に全てまたは一部を委託することもできます。

外国人材の定着と活躍のためには、きめ細やかなサポート体制が不可欠です。

Q4. 特定技能でバスやタクシーの運転手を目指す場合、どの程度の日本語能力が必要で、技能実習制度とはどのように異なりますか?

A4. 特定技能でバスやタクシーの運転業務に従事する場合、トラック運転手よりも高い日本語能力が求められます。

具体的には、日本語能力試験(JLPT)のN3以上への合格が必要です。

これは、お客様との円滑なコミュニケーションが旅客自動車運送事業において特に重要となるためです。

一方、技能実習制度は、主に日本の技術を母国へ持ち帰ることを目的とした国際貢献の制度であり、特定技能制度は国内の人手不足解消を目的とした即戦力としての就労制度である点が大きな違いです。

特定技能 運送業の分野では、技能実習2号を良好に修了した方は、トラック分野に限り日本語試験が免除される場合がありますが、バス・タクシー分野では改めてN3以上の日本語能力を証明する必要があります。

Q5. 特定技能でトラックのドライバーを雇用する場合、運転業務の他にどのような作業を任せることができますか?

A5. 特定技能のトラックドライバーには、貨物自動車の運転業務が主たる業務となります。

しかし、それに付随する業務として、日本人のドライバーが通常行っている範囲の作業であれば任せることも可能です。

例えば、荷物の積込みや荷下ろし、運行前後の車両点検、簡単な清掃、日報の作成などが該当します。

ただし、あくまで主業務は運転であり、付随業務のみに専ら従事させることは認められていません。

貨物自動車運送事業を円滑に進めるために必要な、運転に密接に関連する作業が中心になります。

Q6. 特定技能の運送業に関する最新情報や制度の動向は、どこで確認するのが確実でしょうか?

A6. 特定技能の運送業に関する最新かつ正確な情報を得るためには、まず国土交通省や出入国在留管理庁の公式ウェブサイトをご確認いただくのが最も確実です。

これらの省庁は、制度の変更点や新たな通達などを随時公開しています。

また、業界団体が開催する特定技能 運送業のセミナーや説明会に参加することも、詳細な解説や質疑応答の機会が得られるため有効です。

加えて、「自動車運送業分野特定技能協議会」からの情報も重要になりますので、こちらも定期的にチェックすることをおすすめします。

6. まとめ

この記事では、2024年に新しく始まった特定技能「運送業」について、制度の基本から受け入れ企業の条件、準備の手順、費用や注意点まで幅広く解説しました。

運送業界の人手不足という喫緊の課題に対し、この特定技能制度を正しく理解し、活用することが、外国人ドライバーを円滑に受け入れ、事業を持続的に運営していく上で非常に重要です。

この記事で解説した特に大切なポイントは以下の通りです。

この記事で得た情報を基に、まずは貴社で特定技能制度を活用して運送業の人材を確保できるか、具体的な検討を始めることが大切です。

<参考記事>

※1…自動車運送業分野 | 出入国在留管理庁

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