運送業特定技能

運送業界の人手不足、本当に深刻ですよね。

でも、特定技能「運送業」制度を正しく理解し、活用することが、その解決に向けた確かな一歩になります。

この記事では、2024年に新しく始まった特定技能「運送業」の制度について、その基本から受け入れ企業が満たすべき条件、具体的な準備の手順、さらには必要な費用や注意点まで、7つのステップに沿って詳しくご説明します。(※1)

目次

1. 特定技能「運送業」とは。制度の基本と導入の背景

運送業界の深刻な人手不足を背景に、外国人材を即戦力として受け入れるための特定技能「運送業」制度が新たに導入されました

この制度を正しく理解することが、外国人ドライバー活用の第一歩です。

具体的には、運送業界における人手不足の現状と課題特定技能制度導入の経緯と運送業への適用特定技能「運送業」の対象となる具体的な業務範囲トラック、バス、タクシー各分野での仕事内容、さらには特定技能1号と2号の違いや技能実習制度との比較について詳しく見ていきましょう。

この制度の基本を押さえることで、企業は新たな人材確保の道筋を描けます。

1.1 運送業界における人手不足の現状と課題

日本の運送業界は、トラック、バス、タクシーのいずれの分野においても、ドライバーの高齢化や若年層の入職者減少により、慢性的な人手不足が喫緊の課題です。

令和4年度の有効求人倍率は2.61倍と非常に高く、このまま対策を講じなければ、5年後には約28万8千人ものドライバーが不足すると予測されています。

内訳はトラック分野で約20万人、タクシー分野で約6万7千人、バス分野で約2万2千人の不足が見込まれます。

このような状況は、長時間労働の常態化や、物流・旅客輸送といった社会インフラの維持を困難にする大きな要因となっています。

この深刻な人手不足を解消することが、特定技能制度導入の大きな目的の一つです。

1.2 特定技能制度導入の経緯と、運送業への適用

特定技能制度は、国内での人材確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れることを目的として2019年4月に創設された在留資格です。

深刻化する人手不足に対応するため、2024年3月には、「自動車運送業」を含む4分野が新たに対象として追加されました。

政府は自動車運送業分野において、今後5年間(令和6年度から令和10年度末まで)で最大2万4,500人の特定技能外国人材の受け入れを見込んでいます。

この決定は、日本の経済・社会基盤の持続可能性を維持するために、運送業界の人手不足解消が急務であるとの認識に基づいています。

1.3 特定技能「運送業」の対象となる具体的な業務範囲

特定技能「自動車運送業」の在留資格を持つ外国人が従事できるのは、トラック運送業、タクシー運送業、バス運送業の3つの業種における事業用自動車の運転業務、およびそれに付随する業務です。

具体的には、貨物自動車や旅客自動車の運転に加え、運行前後の車両点検、乗務記録の作成、荷物の積付けや荷役作業(トラック)、乗客への適切な対応や接遇業務(タクシー・バス)などが含まれます。

日本人が通常行っている車両清掃や運行前後の準備・片付けといった関連業務に付随的に従事することも可能ですが、主たる業務はあくまで運転業務とその関連業務です。

これらの業務を通じて、特定技能外国人は日本の物流と旅客輸送を支える重要な役割を担います。

1.4 トラック、バス、タクシー各分野での仕事内容

特定技能「運送業」として働く外国人材は、トラック、バス、タクシーのいずれかの分野で専門的な運転業務に従事しますが、それぞれの分野で求められるスキルや知識、そして日々の業務内容は異なります

トラックドライバーは、主に貨物の安全かつ効率的な輸送を担当し、荷物の積み下ろしやルート配送、長距離輸送など多様な運行形態があります。

バスドライバーは、路線バスや貸切バス、送迎バスなどでお客様を安全・快適に目的地まで輸送する役割を担い、正確なダイヤ運行や乗客への丁寧な案内が求められます。

タクシードライバーは、お客様を個別に目的地までお送りする仕事で、地理に関する知識や臨機応変な対応力、高いコミュニケーション能力が必要とされます。

いずれの分野も、安全運転はもちろんのこと、車両の日常点検や運行記録の作成といった付随業務も重要な仕事内容です。

1.5 特定技能1号と2号の違い、運送業における位置づけ

特定技能には、「特定技能1号」と「特定技能2号」という2つの在留資格区分が存在し、それぞれ対象となる技能水準や在留期間、家族帯同の可否などが異なります。

特定技能1号は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」であり、在留期間は通算で上限5年、家族の帯同は基本的に認められません。

一方、特定技能2号は「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」で、在留期間の上限はなく、要件を満たせば配偶者や子の帯同も可能です。

現時点(2024年6月時点)で、自動車運送業分野においては特定技能1号のみが対象であり、特定技能2号での受け入れはできません。

したがって、運送業で特定技能外国人を受け入れる際は、まず特定技能1号の要件を満たす人材が対象となります。

1.6 技能実習制度との比較。特定技能の特徴

技能実習制度は、日本の技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転し、その国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした国際貢献のための制度です。

これに対し、特定技能制度は、国内での人材確保が困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を即戦力として受け入れることを目的としています。

特定技能制度の大きな特徴は、深刻な人手不足に対応するための労働力確保という側面が強い点です。

技能実習制度が原則として転職を認めていないのに対し、特定技能制度では同一業務区分内での転職や、試験に合格すれば他分野への転職も一定の条件下で可能です。

また、受け入れ機関(企業)には、外国人材への直接的な支援(生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談対応など)が義務付けられています。

運送業界においては、即戦力としての活躍が期待される特定技能制度の活用が、人手不足解消の有効な手段の一つとして注目されています。

日本で運転免許を取る方法について、お話ししますね。特定技能で日本に来て、車の運転ができたら、仕事や毎日の生活がぐっと便利になります。「新しい可能性が広がりますよ」。

2. 外国人材受け入れのための詳細。企業と外国人双方の条件、必要な手続き

2.1 受け入れ企業に求められる運送事業許可と業界団体への参加

特定技能外国人を受け入れる企業は、まず国の定めた運送事業の許可を得ていることが絶対条件です。

具体的には、道路運送法に規定されているトラック事業、バス事業、またはタクシー事業のいずれかの許可を有している必要があります。

さらに、制度の適正な運用と情報共有を目的とした「自動車運送業分野特定技能協議会」への参加も必須とされています。

この協議会には、特定技能外国人の在留資格を申請する前までに加入し、必要な協力を行うことが求められます。

受け入れ企業が満たすべき主な条件は以下の通りです。

これらの許可や団体への参加は、特定技能制度が運送業界において健全に機能し、外国人材と受け入れ企業の双方にとって有益なものとなるための基盤となります。

2.2 働きやすい職場環境の証明。認証制度やGマークの取得

外国人材を受け入れるためには、企業が従業員にとって働きやすい環境を提供していることを客観的に示す必要があります。

その証明となるのが、「働きやすい職場認証制度」や、トラック事業者向けの「安全性優良事業所(Gマーク)」の認証です。

これらの認証は、特定技能外国人を受け入れるための必須条件の一つとなります。

これらの認証制度は、単に外国人材受け入れの条件を満たすだけでなく、法令遵守、労働時間・休日の確保、従業員の心身の健康への配慮など、多岐にわたる項目で職場環境を評価します。

認証を取得することは、結果として日本人従業員を含めた全従業員の満足度向上や、企業のイメージアップにも繋がります。

これらの認証を取得し、維持することは、企業が労働環境の改善に継続的に取り組んでいる証です。

結果として、外国人材だけでなく、すべての従業員が安心して長く働ける職場づくりに貢献し、企業の持続的な発展を支える基盤となります。

2.3 外国人材の技能要件。職種別評価試験の内容

特定技能「運送業」で外国人材が働くためには、一定の技能要件を満たすことが求められます。

これは、業務を安全かつ適切に遂行するための専門的な知識や技術を保有している証明を指します。

その技能を証明する手段として「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」が設けられています。

この試験は、トラック、バス、タクシーの各職種別に実施され、それぞれ学科試験と実技試験を通じて運転技術や安全運行に関する知識が評価されます。

試験の合格に加え、対応する日本の運転免許を保有することも必要です。

したがって、受け入れを検討する外国人材が、希望する職種の技能評価試験に合格し、かつ関連する運転免許を取得していることが、特定技能人材として活躍するための技術的な前提条件です。

2.4 外国人材の日本語能力要件。職種別の水準

特定技能「運送業」で外国人材が活躍するためには、職種に応じた日本語能力が不可欠です。

安全な業務遂行と、顧客や同僚との円滑なコミュニケーションを実現するために、明確な日本語能力の基準が設けられています

具体的には、トラックドライバーとして働く場合には、業務上の指示理解や簡単な報告ができるレベルとして、日本語能力試験(JLPT)でN4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2レベル以上の合格が必要です。

一方、バスやタクシーのドライバーは、乗客とのより直接的で詳細なコミュニケーションが求められるため、日本語能力試験(JLPT)でN3以上という、より高い水準の日本語能力が求められます。

これらの日本語能力基準は、外国人材がそれぞれの職務を適切にこなし、日本の交通社会の一員として安全に貢献するための基礎となります。

企業側は採用する人材がこれらの基準を満たしているかを確認し、必要に応じて日本語学習のサポートを行うことが、円滑な受け入れと長期的な活躍に繋がります。

2.5 日本の運転免許取得プロセスと、海外在住者向け準備期間

外国人材が日本でドライバーとして働くためには、日本の運転免許証が不可欠です。

特に海外に在住している方が免許を取得したり、必要な研修を受けたりするためには、「特定活動」という在留資格を利用した準備期間が設けられています。

この期間や、免許切り替えの「外免切替」制度を理解することが、スムーズな受け入れの鍵となります。

日本で運転免許を取得する方法は主に3つあり、それぞれの状況に応じて選択します。

例えば、日本の自動車教習所で新たに免許を取得する場合、学科試験は2024年6月から20言語に対応しており、外国人材にも門戸が広がっています。

また、海外に居住している方が日本で運転免許取得や研修受講の準備をするための「特定活動」という在留資格では、トラックドライバー志望者は最長6ヶ月、バス・タクシードライバー志望者は最長1年間日本に滞在できます。

これらの方法を活用することで、外国人材は計画的に日本の運転免許を取得し、特定技能ドライバーとしてのキャリアをスタートさせることができます。

企業側は、外国人材の状況に合わせて適切なサポートを行うことが重要です。

2.6 採用から就労開始までの手続き。全体の流れ

特定技能外国人材を運送業で採用し、実際に就労を開始するまでには、いくつかの重要な段階を経る必要があります。

中でも、外国人材の状況に応じた適切な在留資格の申請が、全体の流れを左右する鍵となります。

求人募集から始まり、雇用契約の締結、支援計画の策定、そして在留資格の申請と、一連の手続きを進めます。

特に、外国人材が日本の運転免許を保有していない場合、「特定活動」という在留資格を利用して免許取得や研修を行う準備期間が必要となり、採用から就労開始までには通常6ヶ月以上を要します。

これらの手続きは多岐にわたり、それぞれに時間と費用を要します。

したがって、外国人材の受け入れを成功させるためには、事前の周到な計画と、関係各所との連携が不可欠です。

2.7 外国人材への支援計画。作成と実施の義務、登録支援機関の活用

特定技能外国人を受け入れる企業には、「1号特定技能外国人支援計画」の作成と実施が法律で義務付けられています。

これは、外国人材が日本での仕事や生活に困ることなく、スムーズに社会に溶け込めるようにするための重要な取り組みです。

この支援計画には、入国前の情報提供から始まり、住居の確保、各種手続きのサポート、日本語学習の機会提供、さらには日本人との交流促進まで、多岐にわたる10項目の支援内容が含まれます。

具体的にどのような支援を行う必要があるか、以下の表で確認しましょう。

これらの支援業務は、全て自社で行うことも可能ですが、専門的な知識や多言語対応が求められるため、国が認定した登録支援機関に委託することも認められています。(※2)

登録支援機関を活用することで、企業は支援業務の負担を軽減し、本来の事業活動に集中できます。

支援計画の適切な実施は、外国人材の定着と活躍に不可欠であり、企業が特定技能制度を活用する上で非常に重要なポイントとなります。

2.8 在留資格「特定技能1号」の申請。手続きと必要書類

在留資格「特定技能1号」とは、特定の産業分野において、相当程度の知識または経験を必要とする技能を持つ外国人材が、日本で就労するために必要な法的な資格です。

この資格を得るためには、原則として地方出入国在留管理局に対して、「在留資格認定証明書交付申請」(海外から呼び寄せる場合)または「在留資格変更許可申請」(既に他の在留資格で国内に滞在している場合)といった手続きを進めることになります。

申請には、多岐にわたる書類の準備が求められます。

以下は、その主な例です。

これらの手続きや必要書類の準備は、専門的な知識と細かな確認作業を要するため、行政書士などの専門家への相談を検討することが、スムーズな申請への近道です。

3. 特定技能「運送業」導入のメリットと注意点。費用、教育、安全管理まで

3.1 特定技能「運送業」導入による企業の主な利点

特定技能「運送業」制度の活用は、深刻化するドライバー不足に悩む企業にとって、即戦力となる外国人材を確保し、事業の継続と発展を目指す上で大きな強みとなります。

政府は今後5年間で最大2万4,500人の特定技能外国人材の受け入れを見込んでおり、慢性的な人手不足の緩和が期待できます。

企業がこの制度を導入することで得られる主な利点は、以下の通りです。

これらの利点を最大限に活かすことで、企業は採用課題の解決だけでなく、組織全体の活性化や持続的な成長へと繋げることが可能です。

3.2 特定技能「運送業」導入時の注意点と企業側の課題

特定技能「運送業」を導入する際には、企業側にいくつかの注意点と乗り越えるべき課題が存在します。

特に、外国人材への支援義務の履行や、言語・文化の壁への対応、そして受け入れに伴うコスト負担は、事前に十分な検討と準備が必要となります。

企業が留意すべき主な注意点と課題は、以下の通りです。

これらの課題に計画的に対応し、必要な体制を整備することが、特定技能「運送業」制度の円滑な導入と、外国人ドライバーの定着・活躍につながります。

3.3 言語や文化の違いを乗り越えるための対策

外国人ドライバーを受け入れる上で、言葉の壁や文化・習慣の違いは、コミュニケーションエラーや誤解を生む可能性があります。

これらの違いを乗り越え、外国人ドライバーが安心して能力を発揮できる職場環境を整備するためには、企業側の積極的なサポートと理解促進の取り組みが不可欠です。

具体的には、多言語対応ツールの導入や、異文化理解を深めるための研修などが考えられます。

言語の壁や文化の違いを乗り越えるための具体的な対策例は、以下の通りです。

これらの対策は一例ですが、企業が主体的にコミュニケーションの橋渡しをし、お互いの文化を尊重する姿勢を示すことが、信頼関係の構築に繋がります。

結果として、外国人ドライバーの早期活躍と定着を促進し、企業全体の活性化にも貢献するでしょう。

3.4 外国人ドライバーの日本での運転適応支援と教育

外国人ドライバーが日本の交通環境や業務にスムーズに慣れるためには、企業による積極的な運転適応支援と継続的な教育が不可欠です。

これには、単に運転技術を教えるだけでなく、日本の交通法規、マナー、そして安全意識を深く理解してもらうための多岐にわたる取り組みが含まれます。

例えば、トラックドライバーであれば第一種運転免許、バス・タクシードライバーであれば第二種運転免許の取得をサポートし、特に後者の場合は国土交通省令に基づく「新任運転者研修」を必ず実施します。

これらの支援と教育を継続的に行うことで、外国人ドライバーは安心して業務に専念できるようになり、企業にとっては安全運行の徹底と貴重な人材の長期的な定着という大きなメリットが期待できます。

3.5 受け入れにかかる費用の内訳と企業負担の範囲

特定技能「運送業」で外国人ドライバーを受け入れる際には、様々な費用が発生します。

企業がどの範囲まで費用を負担する必要があるのか、事前に正確に把握しておくことが、円滑な受け入れ計画の第一歩です。

具体的に発生する費用としては、在留資格の申請手続きに関する諸経費、外国人材の募集・採用にかかる費用、そして日本への渡航費などが挙げられます。

さらに、外国人材が日本で生活を始めるための初期支援として、住居の確保や生活オリエンテーションにかかる費用、そして日本語教育の機会提供に伴う費用も考慮に入れる必要があります。

これらの支援業務を登録支援機関に委託する場合は、その委託費用も発生します。

特に重要な費用項目と、企業負担に関する留意点を以下の表にまとめました。

特定技能外国人を受け入れる際には、これらの費用を事前にリストアップし、予算計画をしっかりと立てることが、後のトラブルを防ぎ、スムーズな受け入れを実現するために不可欠です。

3.6 受け入れ後の初期研修。初任運転者研修などの確実な実施

外国人ドライバーを受け入れた後、まず重要になるのが初期研修の実施です。

特に、「初任運転者研修」や「新任運転者研修」は、国土交通省が定める、事業用自動車の運転者として業務を開始する前に必ず受けなければならない特別な指導・教育を指します。

これらの研修は、外国人ドライバーが日本の交通ルールや運転環境に安全に適応し、プロのドライバーとしての自覚と技能を身につけるために極めて重要なステップです。

受け入れ企業には、これらの法定研修を法令に基づき、計画的かつ確実に実施する責任があります。

これらの研修を通じて、外国人ドライバーは日本の道路交通法規の理解を深め、安全運転に必要な知識・技能を習得します。

企業は、研修内容の質を担保し、外国人ドライバーが十分に理解できるよう、言語面での配慮も行いながら、これらの初期研修を省略することなく、丁寧かつ確実に実施することが求められます。

3.7 継続的な日本語教育と安全運転指導の重要性

特定技能外国人が日本で安全かつ円滑に業務を遂行し、長期的に活躍するためには、採用後の継続的な教育と指導が不可欠です。

日常会話レベルの日本語能力だけでなく、業務特有の指示の理解、顧客との円滑なコミュニケーション、さらには緊急時の的確な対応など、具体的な業務場面を想定した日本語教育を継続的に行うことが求められます。

また、日本の交通法規の遵守は当然のことながら、特有の交通事情や運転文化、危険箇所を理解させるための安全運転指導も、繰り返し実施する必要があります。

これらの教育と指導を地道に継続することで、外国人ドライバーは安心して業務に取り組み、企業にとっては事故防止やサービス品質の向上、ひいては貴重な戦力としての定着に繋がります。

3.8 外国人材が定着しやすい職場環境づくり

特定技能で受け入れた外国人材がその能力を最大限に発揮し、日本で安心して長く活躍してもらうためには、受け入れ企業による職場環境づくりが極めて重要です。

これは、法律で定められた支援義務を果たすことはもちろん、言葉の壁や文化・習慣の違いから生じる可能性のある不安を取り除き、外国人材が企業の一員として尊重されていると感じられるような配慮が求められます。

外国人材が定着し、活躍し続けるための職場環境づくりのポイントには、以下のようなものが挙げられます。

これらの取り組みを継続的に行うことで、外国人材は精神的な安定を得て業務に集中できるようになります。

結果として、企業は貴重な人材の流出を防ぎ、組織全体の活性化と持続的な成長を実現することが可能です。

4. 特定技能「運送業」制度活用のための最終準備と情報収集

特定技能「運送業」制度を円滑に活用するためには、正確かつ最新の情報を継続的に収集し、適切な準備を行うことが何よりも重要です。

制度に関する公式情報は、国土交通省や関連省庁のウェブサイトで確認できるほか、自動車運送業分野特定技能協議会からも運用に関する重要な情報が提供されます。

また、関連セミナーや説明会への参加、必要に応じた行政書士など専門家への相談も有効な手段です。

これらの情報収集と準備を通じて、持続可能な運送事業の実現に向けた特定技能制度の戦略的な活用と、受け入れのための盤石な社内体制の整備を進めましょう。

この最終準備段階をしっかりと行うことで、制度導入後のスムーズな運用と、外国人材の活躍促進、ひいては事業の安定化と成長に繋がります。

4.1 最新情報の入手先。国土交通省や関連省庁の公式情報

特定技能「運送業」に関する最も信頼性が高く、基本的な情報は、国土交通省や出入国在留管理庁といった関連省庁の公式ウェブサイトから入手できます。

これらのウェブサイトでは、制度の概要、対象となる業務範囲、外国人材や受け入れ企業の要件、申請手続き、関連法規の改正情報、通達などが随時公開されています。

例えば、国土交通省のウェブサイトでは「特定技能「自動車運送業」の概要」や「特定技能外国人受入れ(自動車運送業分野)の基準概要」といった資料が掲載されており、制度の根幹を理解する上で不可欠です。

2024年3月に自動車運送業が特定技能の対象分野に追加された経緯や、それに伴う詳細な運用ルールもここで確認できます。

これらの公的機関が発信する一次情報を定期的に確認することが、正確な知識を得るための第一歩となります。

制度を正しく理解し、適切な手続きを進めるためには、これらの公式サイトをブックマークし、常に最新の情報を参照する習慣をつけることが推奨されます。

4.2 自動車運送業分野特定技能協議会の役割と提供情報

特定技能外国人を受け入れる企業は、「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入が義務付けられています。

この協議会は、国土交通省が設置し、制度の適正な運用と外国人材の保護を目的としています。

協議会は、制度に関する最新情報の共有、受け入れ企業や外国人材からの相談対応、関係機関との連携、不正行為の防止など、多岐にわたる役割を担います。

具体的には、特定技能外国人の受け入れ状況の把握や、地域ごとの人手不足の状況に応じた情報提供も行い、制度が円滑かつ効果的に運用されるよう努めています。

受け入れ企業は、この協議会に対して必要な報告を行う義務があり、協議会からの指示や指導に従う必要があります。

協議会が提供する情報を活用し、その指導に従うことで、法令を遵守した適切な外国人材の受け入れと管理が可能になります。

自動車運送業分野特定技能協議会への加入と積極的な関与は、特定技能制度を適正に運用し、外国人材の受け入れを成功させるための重要な鍵となります。

4.3 関連セミナーや説明会への積極的な参加による知識更新

特定技能「運送業」に関する制度は比較的新しく、今後も運用状況に応じて細かな変更や追加情報が出てくる可能性があります。

そのため、国土交通省、出入国在留管理庁、業界団体、あるいは行政書士会などが主催するセミナーや説明会に積極的に参加することは、最新情報を効率的に収集し、理解を深める上で非常に有効です。

これらのイベントでは、制度改正のポイントや具体的な申請手続き、受け入れ企業の成功事例や注意点、外国人材とのコミュニケーション方法など、実務に直結する情報が提供されることが多いです。

例えば、最近ではオンライン形式でのセミナーも増えており、地理的な制約を受けずに参加できる機会も増えています。

参加費用がかかる場合もありますが、専門家から直接話を聞ける機会や、質疑応答を通じて疑問点を解消できるメリットは大きいです。

常にアンテナを張り、関連するセミナーや説明会の開催情報をチェックし、積極的に参加することで、知識を最新の状態に保ち、制度活用の質を高めることができます。

4.4 行政書士など専門家への相談検討とそのポイント

特定技能「運送業」の受け入れ手続きは、申請書類の作成や支援計画の策定など、専門的な知識を要する部分が多く、複雑です。

自社だけで全ての手続きを進めることに不安がある場合や、より確実に制度を活用したい場合には、出入国管理業務を専門とする行政書士などの専門家への相談を検討することも有効な選択肢となります。

専門家は、最新の法令や審査基準に基づいた的確なアドバイスを提供してくれるだけでなく、煩雑な書類作成や申請代行を依頼することも可能です。

特に、初めて特定技能外国人を受け入れる企業や、社内に専門知識を持つ担当者がいない場合には、専門家のサポートが大きな助けとなるでしょう。

相談する際には、自動車運送業分野の特定技能に関する実績が豊富かどうか、料金体系が明確であるか、コミュニケーションが円滑に取れるかといった点を確認することが重要です。

複数の専門家に話を聞いて比較検討することも一つの方法です。

専門家の力を借りることで、手続きの負担を軽減し、法令遵守を確保しながら、スムーズな外国人材の受け入れを実現できます。

適切な専門家を見つけ、効果的に活用することで、特定技能制度導入のハードルを下げ、より安心して外国人材の受け入れを進めることができるでしょう。

4.5 持続可能な運送事業実現に向けた特定技能制度の活用と社内体制整備

特定技能「運送業」制度は、単に人手不足を補うための一時的な手段ではなく、企業の持続的な成長と運送事業の安定化に貢献する戦略的な取り組みとして捉えるべきです。

そのためには、制度の活用と並行して、外国人材が能力を最大限に発揮し、長期的に定着できるような社内体制の整備が不可欠となります。

具体的には、受け入れ前の準備段階から、言語・文化の壁を乗り越えるためのコミュニケーション支援、日本人従業員の異文化理解促進、キャリアパスの提示、適切な評価制度の導入、そして安全管理体制の徹底など、多岐にわたる配慮が必要です。

例えば、特定技能1号の在留期間は最長で5年間ですが、その間に外国人材がスキルアップし、将来的にはより上位の資格取得や責任あるポジションを目指せるような環境を整えることで、モチベーションの維持・向上にも繋がります。

特定技能制度を戦略的に活用し、外国人材が働きがいを感じられる職場環境を構築することが、将来にわたる運送事業の発展と、地域社会への貢献に繋がります。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 日本の運転免許を持っていない外国人の方を、特定技能のドライバーとして採用することは可能ですか?

A1. はい、可能です。

特定技能「自動車運送業」では、日本の運転免許をお持ちでない外国人の方も、まず「特定活動」という在留資格で日本に入国し、運転免許の取得や必要な研修を受けるための準備期間が設けられています。

この期間中に、トラック運転者であれば最長6ヶ月、バス・タクシー運転者であれば最長1年間、日本に滞在して免許取得などに専念できます。

免許取得後、特定技能1号へ移行する手続きを行いますので、企業様は受け入れ準備を進めることが大切です。

Q2. 特定技能で運送業の外国人材を受け入れる企業として、どのような準備や条件が必要になりますか?

A2. 特定技能の外国人材を運送業で受け入れる企業様には、いくつかの重要な条件があります。

まず、道路運送法に基づく自動車運送事業者であることが基本です。

それに加え、外国人材が安心して働ける環境整備への取り組みを示す「働きやすい職場認証制度」の認証を受けていること、またはトラック事業者様の場合は「安全性優良事業所(Gマーク)」の認定を受けていることが求められます。

さらに、国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入も、在留資格申請前までに必要です。

これらの準備を整えることが、特定技能の受け入れ企業としての第一歩です。

Q3. 特定技能の外国人ドライバーを受け入れるにあたり、企業はどのような支援を行う義務がありますか?

A3. 企業様には、特定技能の外国人ドライバーが日本で安心して仕事と生活ができるよう、多岐にわたる支援を行う義務が生じます。

具体的には、来日前の情報提供、出入国時の送迎、住居の確保支援、銀行口座開設や携帯電話契約などの生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供、相談や苦情への対応などが挙げられます。

これらの支援は、登録支援機関に全てまたは一部を委託することもできます。

外国人材の定着と活躍のためには、きめ細やかなサポート体制が不可欠です。

Q4. 特定技能でバスやタクシーの運転手を目指す場合、どの程度の日本語能力が必要で、技能実習制度とはどのように異なりますか?

A4. 特定技能でバスやタクシーの運転業務に従事する場合、トラック運転手よりも高い日本語能力が求められます。

具体的には、日本語能力試験(JLPT)のN3以上への合格が必要です。

これは、お客様との円滑なコミュニケーションが旅客自動車運送事業において特に重要となるためです。

一方、技能実習制度は、主に日本の技術を母国へ持ち帰ることを目的とした国際貢献の制度であり、特定技能制度は国内の人手不足解消を目的とした即戦力としての就労制度である点が大きな違いです。

特定技能 運送業の分野では、技能実習2号を良好に修了した方は、トラック分野に限り日本語試験が免除される場合がありますが、バス・タクシー分野では改めてN3以上の日本語能力を証明する必要があります。

Q5. 特定技能でトラックのドライバーを雇用する場合、運転業務の他にどのような作業を任せることができますか?

A5. 特定技能のトラックドライバーには、貨物自動車の運転業務が主たる業務となります。

しかし、それに付随する業務として、日本人のドライバーが通常行っている範囲の作業であれば任せることも可能です。

例えば、荷物の積込みや荷下ろし、運行前後の車両点検、簡単な清掃、日報の作成などが該当します。

ただし、あくまで主業務は運転であり、付随業務のみに専ら従事させることは認められていません。

貨物自動車運送事業を円滑に進めるために必要な、運転に密接に関連する作業が中心になります。

Q6. 特定技能の運送業に関する最新情報や制度の動向は、どこで確認するのが確実でしょうか?

A6. 特定技能の運送業に関する最新かつ正確な情報を得るためには、まず国土交通省や出入国在留管理庁の公式ウェブサイトをご確認いただくのが最も確実です。

これらの省庁は、制度の変更点や新たな通達などを随時公開しています。

また、業界団体が開催する特定技能 運送業のセミナーや説明会に参加することも、詳細な解説や質疑応答の機会が得られるため有効です。

加えて、「自動車運送業分野特定技能協議会」からの情報も重要になりますので、こちらも定期的にチェックすることをおすすめします。

6. まとめ

この記事では、2024年に新しく始まった特定技能「運送業」について、制度の基本から受け入れ企業の条件、準備の手順、費用や注意点まで幅広く解説しました。

運送業界の人手不足という喫緊の課題に対し、この特定技能制度を正しく理解し、活用することが、外国人ドライバーを円滑に受け入れ、事業を持続的に運営していく上で非常に重要です。

この記事で解説した特に大切なポイントは以下の通りです。

この記事で得た情報を基に、まずは貴社で特定技能制度を活用して運送業の人材を確保できるか、具体的な検討を始めることが大切です。

<参考記事>

※1…自動車運送業分野 | 出入国在留管理庁

※2…登録支援機関の支援内容

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